「屋根裏でドタドタと音がする」。台風のあと、空き家にした実家を久しぶりに訪ねてそう感じたら、原因は一辺8cmの隙間かもしれません。
この記事でわかること
ハクビシンの成獣は、一辺8cmの正方形と直径9cmの円形の隙間を通り抜けます(農研機構の試験)。体長40〜60cmの動物が、通風口ほどの穴から屋根裏に入るということです。だから空き家の害獣対策は、駆除より先に「8cmより大きい穴を残さない」ことから始まります。
- ハクビシンが通り抜けた隙間の実測値(正方形8cm・円形9cm・長方形6×12cm)
- 月に1回しか行けない空き家で、侵入の痕跡を見つける点検5か所
- 捕獲に許可が要る場合と、自治体が自ら捕獲してくれる場合の違い
- この秋のうちに塞いでおきたい場所と、塞ぐ前に必ずやること
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秋から冬に屋根裏の物音が増える理由
「冬になれば静かになるだろう」と考えたくなりますよね。残念ながら、その前提は成り立ちません。
東京都環境局のアライグマ・ハクビシンの生態のページによると、ハクビシンは体長40〜60cm、体重2.0〜5.5kgの夜行性の動物で、「樹上のうろ、納屋や家屋、寺社仏閣の屋根裏などの中で休息」します。繁殖は年に1回ですが、都のページは「一年中繁殖が可能である」と書いています。冬眠して勝手にいなくなる動物ではない、ということです。
食性は雑食で、都のページはハクビシンが特に果実を好むと記しています。だから東京都は侵入防止・予防策のページで「庭木の果実や放棄農作物などを適切に処理し、残したままにしないようにする」ことを挙げ、さらに「空き家を点検・撤去を行う」ことまで対策として明記しています。手入れをする人がいない庭の果実が秋に落ち、そのまま残る家。行政が名指しで気にしているのは、まさにその状態の家です。
そこに、もうひとつの秋の事情が重なります。台風で軒天や棟板金が傷めば、新しい入り口ができます。しかも空き家には、その物音を聞く人がいません。気づくのは次に訪れた日です。台風のあとに何をどう見るかは台風前の点検チェックリストにまとめています。運営者も実家が数年のうちに空き家になる見込みで、当事者として調べている一人です。
ハクビシンは8cm四方の隙間を通る
「あの体格で、そんな穴からは入れないだろう」という感覚は、実験値と合いません。
農研機構(近畿中国四国農業研究センター)の2013年の成果情報「ハクビシンは狭い隙間から侵入できる」は、繁殖可能な成熟個体4頭(雄2頭・雌2頭)を使い、大きさと形の違う入口を通れるかどうかを調べています。結果がこれです。
| 入口の形 | 通り抜けられた寸法 | 家でいうと |
|---|---|---|
| 正方形 | 一辺8cm | 床下換気口の欠け、軒天の点検口 |
| 円形 | 直径9cm | 配管まわりの貫通穴、丸型の換気口 |
| 横長の長方形 | 6×12cm | 軒天と外壁のすき間、破風の継ぎ目 |
| 縦長の長方形 | 11×7cm | 戸袋の縦すき間、雨戸の戸当たり |
| 細長い長方形 | 長辺20cmなら短辺6cm | 屋根と外壁の取り合い、棟板金の浮き |
同じページは、活用上の留意点として「日本の家屋は通気性を高めるために随所に隙間がある構造を有する」ため、壁の間を移動して家屋内を自由に動ける可能性があるとも書いています。古い木造の家は、もともと通気のために穴が開いている建物だ、という指摘です。
8cmはあくまで「正方形の穴」の基準です。細長い隙間なら短辺6cmで通ります。塞ぐかどうかの判断は、穴の面積ではなく短いほうの辺で決めてください。
対策として同ページが挙げるのは、通風口などを「金網などの目が広がらないもので覆い、外壁や屋根の破損などを定期的に点検する」ことです。樹脂ネットではなく、目が広がらない金網。ここは素材の指定だと読み取るべきところです。
月1回しか行けない家の点検5か所
毎日住んでいれば足音で気づきます。月に1回の訪問では、痕跡から逆算するしかありません。訪問のたびに次の5か所だけ見てください。
| 場所 | 見るもの | 見つけたら |
|---|---|---|
| 1. 軒天・破風 | 板のめくれ、継ぎ目の開き、黒い手垢状の汚れ | 短辺6cm以上なら要対処 |
| 2. 床下換気口・通風口 | 格子の割れ、金網の外れ、落ち葉の詰まり | 金網で覆う |
| 3. 屋根と外壁の取り合い | 棟板金の浮き、瓦のズレ、漆喰の崩れ | 高所は業者へ |
| 4. 建物に触れる庭木 | 屋根や雨樋に届いている枝、落ちた果実 | 枝を切り、果実を片づける |
| 5. 天井・押し入れの上 | 天井のシミ、獣臭、糞、天井裏の足跡 | 屋根裏をのぞく |
5番目は農研機構のページが直接すすめている手順です。「家屋の天井にシミがある場合、屋根裏に侵入している可能性があるので屋根裏をのぞいて点検する」と書かれています。天井のシミは雨漏りのサインでもあり、この2つは同じ場所で重なります。判断に迷ったら空き家の雨漏り修理の記事もあわせて読んでください。4番目の枝は、東京都が「家屋への侵入経路となるような木の枝等は切る」と対策に挙げているものです。
5か所はスマホで撮って日付ごとに残しておくと、次の訪問で「増えたかどうか」が判断できます。業者に相談するときの材料にもなります。
自分で捕獲する前に確認すること
屋根裏に姿が見えると、罠を買って自分で捕まえたくなります。そこは止まってください。
環境省の捕獲許可制度の概要は、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)では「狩猟により捕獲する場合を除いて、原則としてその捕獲、殺傷又は採取が禁止されています」と説明しています。被害が生じている場合などには環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲できますが、その多くは市町村長に権限が移譲されています。つまり、窓口は市役所・町村役場です。
ここからが、一般住宅向けの解説では省かれがちな部分です。動物の種類によっては、あなたが申請する前に自治体が自ら捕獲します。相模原市のよくある質問を例に見てみましょう。
- アライグマ:外来生物法の特定外来生物にあたり、市は「神奈川県アライグマ防除実施計画に基づき捕獲を行っています」
- ハクビシン:「被害等防除対策を行っても被害が防止できない場合は、市で捕獲します」
- それ以外の野生鳥獣:市は捕獲を行わず、被害を受けている人が「県や市の許可を受けたうえで捕獲することができます」
東京都でも、区市町村が東京都アライグマ・ハクビシン防除実施計画に基づいて捕獲を実施しています。同じ動物でも、住んでいる自治体によって「市が来る」のか「自分で許可を取る」のかが変わるわけです。空き家の所在地の役所に電話して、この3分類のどれに当たるかを聞くのが最初の一手になります。
一方、追い出しと穴塞ぎは捕獲ではないので、所有者が自分で進められます。ただし相模原市は「動物が建物の中にいないことを確認してから侵入口をふさいでください」と注意しています。中にいるまま塞ぐと、天井裏で死んだ個体の処理という、はるかに厄介な事態になります。
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費用は気づくまでの年数で決まる
「いくらかかるか」を先に知りたい気持ちはわかります。ただ、この分野の金額は建物の状態と放置年数で桁が動くので、相場表を見ても自分の家の数字にはなりません。決まり方の構造で考えたほうが早いです。
費用は大きく3つに分かれます。ひとつめは捕獲。前の章のとおり、アライグマやハクビシンで自治体が捕獲するケースなら、ここは行政が動きます。逆に対象外の鳥獣で専門業者に頼むと、相模原市のページも「捕獲費用がかかりますので、ご確認ください」と注記しているとおり、依頼者の負担です。ふたつめは侵入口を塞ぐ材料。金網やパンチングメタルは、面積が小さいうちなら1,000円前後から始められます。
そして三つめが、放置した年数だけ膨らむ建物側の修繕です。糞尿は断熱材と天井材に染み、天井にシミが出ます。この段階になると害獣の話ではなく屋根と天井の工事になり、金額の桁が変わります。つまり「気づくまでの年数」が費用を決めているわけです。
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高所の破損は、はしごに登って自分で見る場所ではありません。屋根や軒天の傷みが原因と思われるときは、点検と見積もりだけでも先に取っておくと、修繕が雨漏りに発展する前に手を打てます。
この秋のうちに塞いでおく場所
全部を一度にやる必要はありません。優先順位はもう決まっています。
まず、中にいないことの確認です。相模原市は、天井裏に侵入した動物は食べ物を探すために外に出ると説明しています。日没後に出ていったのを確認してから塞ぐ、という順番になります。次に、短辺6cm以上の開口を上から順に潰します。1に軒天・破風の破損、2に床下換気口と通風口、3に屋根と外壁の取り合い。最後に、屋根や雨樋に届いている庭木の枝を切り、落ちた果実を片づけます。これで「入り口」と「呼び水」の両方が減ります。
そのうえで、次の訪問までの「留守番」を1つ置いておくと、変化に気づきやすくなります。
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空き家の管理全般については古民家・空き家まとめに補助金や冬支度の記事を集めています。今週やることは3つです。役所に電話して自治体の捕獲対象か確認する。5か所を写真に撮る。短辺6cm以上の穴を1つ塞ぐ。ここまでで、この冬の物音はだいぶ減らせます。
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参考にした情報
- 農研機構 近畿中国四国農業研究センター「ハクビシンは狭い隙間から侵入できる」(2013年の成果情報)
- 東京都環境局「アライグマ・ハクビシンについて」
- 東京都環境局「侵入防止・予防策」
- 環境省 自然環境局「捕獲許可制度の概要」
- 相模原市「屋根裏に棲みついたハクビシン等で困っています。どうしたら良いですか。」
本記事は広告(アフィリエイトリンク)を含みます。制度や自治体の運用は地域ごとに異なるため、実際の手続きは空き家の所在地の自治体にご確認ください。

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